研究概要 |
平成14年度におこなった研究により得られた成果を,研究実施計画に沿って以下に記載する: 1.ロバスト適合条件の導出 制御対象の数学モデルには多かれ少なかれ,必ずモデル化誤差が存在する.そのため,モデル化誤差の影響を制御系の設計時に考慮しておかないと,所望の制御性能を得られないばかりか,制御系に対する基本的要請である安定性が崩れてしまう可能性がある.そこで,離散時間適合サーボ系の設計において,このようなモデル化誤差の影響を考慮した設計手法を構築した.生起可能入力集合としては。振幅と変化率(サンプル間の差)に制限のあるものを考え,サーボ系に対する目標値がこの入力集合に属する場合を考えた.また,制御対象のモデル化誤差を乗法的誤差であらわし,その大きさをインパルス応答のl1ノルムで定量化した.さらに,制御系の構造を2自由度系とし,安定性と目標値追従性を独立に調整できるようにした.このような仮定のもとで,制御系がロバスト安定であり,目標値に対する偏差と,制御入力が指定された値以下に収まるための条件(ロバスト適合条件)を導いた.ただし,解析的に適合条件を導出するため,ここでは十分条件として取り扱った. 2.CACSDシステムへの実装 1.で導出したロバスト適合条件に基づき,2自由度離散時間ロバスト・サーボ系の設計を支援する,コンピュータ援用制御系設計CAD(CACSD)システムを構築した.このCACSDは,設計仕様(偏差と制御入力に対する制約値)を与え,コントローラの構造と可調整パラメータを指定することにより,設計仕様を満たすパラメータを数値探索により求めるものである.これは,平成13〜14年度の研究の中で開発した不等式制約法に基づくCACSDシステムをベースにして開発した. 3.設計手法の有効性評価 開発した設計手法の有効性を評価するため,DCサーボ・モータの速度制御系の設計をシミュレーションおよび実験の両方により確認した.指定された回転速度偏差と入力電圧以下に収まる2自由度制御系を設計することができた.
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