研究概要 |
既存の移動機構では適応困難な狭窄空間への侵入を,アメーバのような自由変形を行うことで可能とする,新しいタイプの不定形移動機構の提案・開発を行った.提案する移動機構は,複数の単機能ユニットで構成され,個々のユニットは運動自由度を1つしか持たないにもかかわらず,群として集合することで,平面内の任意の運動を可能とする仕組みである.本研究では,異なるユニットで構成される2種類の不定形移動機構について開発を進めた. 一方は歯車型ユニットタイプと呼び,一自由度の回転運動機能とブレーキ機能を搭載したユニットを複数組み合わせて構成される.各ユニットの回転運動とブレーキを適宜制御することで,機構全体として変形を伴う移動を可能にする仕組みである.歯車がかみ合うことでユニット間の連結を強固にできるため,従来機構と比較して,移動機構部の剛性を高くできる点に特徴がある.これまでのシミュレーション実験結果を踏まえ,本年度は実際に試作機の開発を行った.試作機の開発にあたっては,特に各ユニット間の引力生成手法が大きな課題となるが,著者は6極磁石を用いて群を形成する手法を考案し,実験により高速な変形移動を確認した.今後は,各ユニットに局所通信機能を搭載することで,自律分散的な制御手法について検討を進める予定である. 他方は球型ユニットタイプと呼び,1自由度の並進運動とブレーキ機能を持つ.歯車型同様,複数ユニットで群を形成し,1つの移動機構を構成する.任意のユニット運動に伴う衝突をうまく制御しながら,群としての変形・移動を実現する仕組みである.球型タイプはユニット間の連結を自由に解けるため,より自在な変形が可能な点に特徴がある.シミュレーション実験により,考案したアイデアの有効性を確認した.今後はより詳細な検討を進め,駆動原理,実機に必要なスペック,制御手法を明らかにする予定である.
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