研究概要 |
前年度に引き続き、真空中の絶縁物上帯電分布をリアルタイムに測定するための測定装置の構築を行った。本年度は、真空チャンバ、真空排気装置、試料台を準備し、真空環境の整備を実施した。さらに前年度用意した光学系、レンズ系、画像処理系から成るリアルタイム帯電測定装置と真空チャンバ内の試料・電極系とを合わせて、真空中の帯電・放電測定を行えるよう準備した。また、それと同時にHe-Neレーザ光のBSO素子、透明電極、誘電体ミラー間で発生する多重反射による干渉縞の除去を行った。帯電電荷分布に対応するレーザ光の光強度分布が高速度ビデオカメラにより計測されるので、その光強度分布を帯電電荷密度分布に変換するための画像処理装置を構築し、そのためのソフトウェアーを作成した。 上記実験装置の構築により,真空中の沿面放電時の帯電を測定することに成功した。また,比較対照として大気中における沿面放電時の帯電分布も測定した。実験は,BSO素子上に絶縁体フィルムであるPETを配置し,その中心に針電極を接触させ,その電極に商用周波の交流高電圧を印加し,そのときの帯電・放電の様子を測定した。その結果,両者の帯電・放電の様子は当初の予想通り明確に異なっていることがわかった。真空沿面放電時の帯電分布は,負極性の電圧サイクルにおけるフラッシオーバ時に僅かながら正極性の帯電が発生していることが明らかになった。また,放電が治まり,絶縁が回復して電圧が印加された場合には,負極性の帯電が観測された。正極性の電圧サイクルでは,針電極の周辺に正極性の帯電が観測された。一方,大気中の帯電分布は,放電後に電圧の極性と同じ帯電が試料全体に観測された。また,真空沿面放電時の帯電電荷密度は,大気中と異なり非常に小さいことがわかった。これらの結果は,当初の予定通り,2002年7月に開催された「真空中の放電と絶縁に関わる国際シンポジウム(20^<th>ISDEIV)」で公表した。今後の課題としては,未だ反射光に光学的ノイズが重畳しており,反射光のS/N比が悪いので,試料の研磨法や誘電体ミラーの蒸着条件を変えることによって,ノイズを除去することと,光位相変調器を測定系に加えることによって更なる感度の向上が挙げられる。
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