研究概要 |
本研究は,太陽光発電システムなどの分散電源が配電系統に大量に導入されることによって生じる低圧配電系統内の高調波電流の増加とそれに起因して生じる電圧ひずみの補償について研究を行った。本研究期間を通して得られた研究概要は以下のように要約される。 1.低圧配電系統の高調波ひずみの現状調査 商業用ビルディング等の建造物内における三相4線式低圧配電系統において,電圧ひずみの調査を行い,3次高調波成分が支配的であることを実測により明らかにした。さらに,その支配的な要因について理論解析とシミュレーションにより検討を行った。 2.低圧配電系統の電圧ひずみの抑制を目的とした電力用アクティブフィルタの開発 電圧高調波成分の中で支配的な成分である3次高調波成分を抑制するために,一台の単相インバータから構成される電力用アクティブフィルタの開発を行った。本研究で提案するアクティブフィルタを用いることによって三相4線式配電系統の電圧高調波を効果的に低減できることをシミュレーションと模擬配電系統を用いた実験により明らかにした 3.中性線用アクティブフィルタの設置点と制御法に関する研究 本研究課題で提案した電圧ひずみを低減するための中性線用アクティブフィルタの設置点としては,建造物内部における受電用変圧器の近傍に設置することが最も有効であることを解析結果と実験により示した。さらに,中性線電流の抑制法とアクティブフィルタの直流電圧制御法についてシミュレーションと実験により動作確認を行った。 本研究課題で得られた成果は,太陽光や風力などの自然エネルギーを利用した発電システムを配電系統と連系運転する場合に問題となる電源の高調波ひずみの影響を低減することが可能である。また,新しい概念に基づく電力用アクテイブフィルタの提案により今後の高調波対策に大きく寄与できると考えることができる。
|