研究概要 |
多結晶及び単結晶基板上においてMOCVD法による強誘電体ナノ構造の作製と評価を行うとともに,研究成果の総括を行った.以下にその概略を示す. 1.単結晶及び多結晶基板上に作製したPZTナノ構造の強誘電性の観察 (1)Pt/SiO_2/Si基板上に作製したPbTiO_3ナノ構造では,幅と高さをそれぞれ成長時間と成長温度により,個別に制御できた.成長温度390℃で作製したPbTiO_3ナノ構造のサイズは,幅30-70nm及び高さ1-7nm程度であった.圧電応答顕微鏡による観察から,最小で,幅38nm,高さ1.7nm,体積1.9×10^3nm^3のPbTiO_3ナノ構造が強誘電性を有することが明らかとなった. (2)Pt/SrTiO_3基板上では,基板の結晶方位が(110)及び(111)の場合,それぞれ棒状及び三角形状のエピタキシャルPbTiO_3ナノ構造が形成された.これらのナノ構造も強誘電性を示した.多結晶基板上の場合と異なり,エピタキシャルPbTiO_3ナノ構造は,基板から大きな応力を受けて変形し,バルクとは異なる結晶構造を持つことが明らかとなった. 2.研究成果の総括 各種多結晶及び単結晶基板上において強誘電体ナノ構造の作製を行ったところ,現象論から予測される強誘電性が安定に存在する臨界サイズ(〜10^3nm^3)とほぼ同サイズのPbTiO_3ナノ構造において,強誘電性の存在を実験的に明らかにすることができた.単結晶基板上では,基板の結晶方位により,強誘電体ナノ構造の形状や方向を揃えられる可能性があることがわかった.また,基板からの応力によりバルクと異なる結晶構造を持つことが見いだされ,強誘電性のみならず,ナノ構造特有の物性が発現する可能性が示唆された.さらにこれらの強誘電体ナノ構造を成長初期核として利用することにより,強誘電体Pb(Zr, Ti)O_3薄膜を400℃以下の低温で作製することに成功した.
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