研究概要 |
アナログ-ディジタル(A/D)変換における標本化および量子化の操作を光領域で行なう方法として、ファイバの非線形光学効果を用いる方法についての原理確認実験を行なった。本年度は、ファイバ中の四光波混合(FWM)による標本化操作とソリトン現象を用いた量子化操作の連続実験(実験I)を行なうとともに、周波数の異なるパルスとの衝突によって、高次ソリトンを複数個のソリトンに分裂させる実験(実験II)を行なった。 まず、実験Iでは、中心波長1556.5nm,パルス幅6ps,繰り返し周波数25MHzの光パルス列と中心波長1561nmの連続光を全長261mの分散シフトファイバ(DSF)に入射させ、発生したFWM光を帯域幅1nmの光フィルタによって切り出し、さらに全長1036mの非零分散シフトファイバ(NZ-DSF)に入射させた。連続光のDSFへの平均人射電力を変化させ、ファイバ出射端で自己相関波形を観測した。ソリトン次数(含まれるソリトンの数)に特徴的な自己相関波形が観測されたことから、標本化されたパルスの振幅に応じた個数のソリトンが発生していることを確認した。次に、実験IIでは、パルス幅2.7ps,中心波長1554nmの2次ソリトンと、パルス幅2.6ps,中心波長1550nmの基本ソリトンを、全長10049mのNZ-DSF入射端で衝突させ、出射端でその自己相関波形を観測した。3つのピークを持つ自己相関波形が観測されたことから、2次ソリトンが18ps離れた2つのソリトンに分裂したことを確認した。この操作によって、高次ソリトンに含まれるソリトンの個数を数えることができる。以上、2つの実験結果から、連続的に変化するアナログ信号の振幅を離散的なソリトンの個数に変換することによる光領域での量子化操作は原理的に可能であることを示した。
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