研究概要 |
本研究では,3次元腹部CT画像を対象とした診断支援システムの開発を行った.具体的には,臨床からの要求が高い腎臓と肝臓を対象としたシステムを開発した.これらのシステムは,まず,3次元CT像から対象臓器を抽出し,次にその内部から異常部位を検出するが,それぞれについて以下の成果が得られた. まず,臓器領域の抽出処理においては,対象臓器の知識を積極的に活用する仕組みを作ることによって,大きさや形状が変化に富み,かつ,隣接する臓器や組織とのコントラストが著しく小さい臓器影も精度良く認識可能な処理を開発した.具体的には,動的輪郭モデルを用いた手法を開発したが,その中で,初期モデルの形状,大きさ,配置方法,およびモデルの変形を規定する評価関数を工夫して,臓器影の大きさや形状のばらつきに対して処理の性能が頑強になるようにした. 次に,抽出された領域の内部から異常部位を抽出する処理に関しては,まず,悪性の腫瘤影の特徴,例えば大きさや形,また,内部や周辺の濃度分布に関する特徴を詳細に調べ,データベース化した.次に,腫瘤影以外の正常の陰影についても同様に調べ,それらの結果から両者を区別するための有効な手順を開発した. 以上のシステムを実際の人体を撮影した3次元腹部CT画像に適用して性能を評価した.また,その結果を元に各処理の性能の改善を試み,最終的に異常部位の大部分(95%以上)を適確に指摘可能なシステムが完成した.
|