研究概要 |
最近,ますます高性能化が進むデジタルカメラによっても,撮影した画像と実際に我々が眼にする画像の違いは歴然としている.この原因の一つはデバイスの性能限界にあり,撮影されるシーンのダイナミックレンジが広い場合に情報が欠落してしまうことが挙げられる.また,仮にこうした問題を回避して全ての諧調情報を取得出来たとしても,撮影時とCRTを観察する際の観察条件が大きく異なるために,視覚特性が変化し,再現画像と知覚する画像は異なるものとなってしまう.特に自然画像はダイナミックレンジが広く,視覚特性の変化の影響が顕著に現われる場合が多い.そこで本研究ではデジタルカメラを用いた画像再現において,カラーイメージングの重要課題であるWYSWYGの実現を目的とし,特に,広ダイナミックレンジ画像の再現を目指す.まずカメラの撮影パラメータを変化させ撮影した複数画像から,自然画像の輝度情報を余すことなく取得した.さらに,観察条件によって明るさ知覚が変化する点に着目し,シーン内の明るい場所,暗い場所への適応によってコントラスト知覚がどの程度変化するのかを心理物理実験によって計測し,この結果に基づいて輝度補正を行う.最終的に輝度補正した複数画像を多重解像度表現に基づいて統合した.その結果,我々が知覚するような自然な画像再現が可能となった.視覚系においても,様々な視点の画像情報を統合しているのは明らかである.本研究で行った明るさマッチング実験の結果は,統合の際に順応レベルの異なる様々な画像が統合されていることを示唆するものである.現時点ではその詳細は明らかでないものの,多重解像度表現による統合がヒトにとって自然な画像を生成することは十分理由のあることと考える.現在,提案法はMatlab上でインプリメントされており,688×480のサイズの画像に対して10秒程度の処理時間であった.専用プログラムによれば極めて高速に実行可能であり,自然画像の再現のみならず,顕微鏡写真や医用画像など,広DRが問題となる様々な分野に応用できるものと考えている.
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