研究概要 |
本研究は,磁気異方性を利用して鉄道用レール内部に発生する応力,つまりレール軸力を非接触で測定するセンサの開発を行うことを目的としている。研究期間中,研究代表者は試験片の脱磁効果,試験片に残留磁気が存在する場合のセンサの出力特性,および試験片に引張応力を印加した場合におけるセンサの出力特性を検討した。 (1)試験片の脱磁効果 レール軸力をJIS60kgレールの腹部で測定することを想定して,厚さ16.5mmのレール鋼試験片を60Hzの交流で減衰脱磁を行う場合に,起磁力750A程度を与えることにより良好な脱磁効果が得られることを実験的に明らかにした。 (2)試験片に残留磁気が存在する場合のセンサの出力特性 試験片内の透磁率分布を磁化容易軸方向に増加した楕円状に仮定した場合,試験片内に残留磁気が存在しない場合に比べ,残留磁気が存在する場合にはセンサの出力電圧の最大値が増加することを理論的および実験的に明らかにした。また,試験片内に残留磁気が存在して応力が印加されている状態ではセンサの出力特性分布に変化が生じることを理論的に明らかにした。 (3)試験片に引張応力を印加した場合におけるセンサの出力特性 JIS60kgレールから作成した試験片に万能試験機を用いてセンサの出力電圧-応力特性を,レール座屈が発生するとされる126MPaを超える150MPaまで実測した。応力を増加させた場合に50MPa付近で出力電圧の減少が見られ,その後ほぼ応力に比例して増加した。よって,本センサはレール座屈を予測する上で必要な100MPa以上のレール軸力を容易に測定できる可能性があることを示すことができた。
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