研究概要 |
本研究は,人間の皮膚の持つ二種類の主な機能である圧覚と温冷覚の機能を単一のセンサデバイスで実現する新しいセンシング手法を提案し,人間の知的な機能である順応性および自己調節機能を付加した新しい多機能触覚センサの実現を目的としている。 平成14年度は,平成13年度の研究成果に基づき,触覚センサの製作および性能評価を行った。 平成13年度においては,触覚センサの内部温度の時間変化から、センサ温度と外気温度が等しくない場合には、物体の熱的性質の違いとセンサ(シリコーンゴム)の変形量による接触圧の違いが識別しうるという結果が,シミュレーションにより得られている.そこで本年度は,センサ材料として柔軟性に富んだシリコーンゴムと温度情報を取得するサーミスタを用いて触覚センサを製作した.本センサは,片側(内部側)を室温よりも高い一定温度に保ち(自己調節),シリコーンゴムの表面付近と内部に非常に小型のサーミスタを埋め込むことで,二種類の温度変化をセンシングする。 製作した触覚センサの性能評価実験は,センサ信号取得用ディジタル計測機器および代表的な材質の試料物体を用いて行なわれた。また,接触力の変化は,コンピュータによって制御可能な簡易可動装置を用いて行われた。今回は,外気温度(物体温度)がセンサ温度よりも低い一定温度状態で実験を行った.実験結果より,簡便なセンサ構造および単一センサ材料にもかかわらず,二種類の温度変化のみで物体の熱的性質と接触力の識別が可能であることが示された。また,外気温度によってセンサ内部の温度分布も変化するが(順応),そのときの外気温度に対応したデータを用いることで物体識別と接触力センシングが可能であることも示された。
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