研究概要 |
本研究では,非ホロノミックシステムの制御問題に対して,多くの従来法のように変数変換を行うことなく,制御対象の物理モデルを直接用いて制御系を設計することにより,より大域的な制御が実現可能な新しい手法(その特徴から本手法を経路生成型レギュレータと呼んでいる)の開発に取り組み,非ホロノミックシステムの一つである車輪型移動ロボットの実機実験を通して,その有効性を検証することを目的とする.研究実績の概要は,以下の通りである. 1.制御アルゴリズムの実装 以下の手順により,2輪独立駆動の車輪型移動ロボットの実験システム上に,本研究で開発した制御アルゴリズムの実装を行った. (1)実入力へ対応した制御則への変換…理論上の入力(並進速度および回転角速度)と実入力(車輪の角速度)との幾何学的な関係式を用いて,実装可能な制御則へ変換した. (2)車輪の角速度制御プログラムの実装…実入力の角速度制御はPID制御系を用いて実現した. (3)センサ(ロータリエンコーダ)処理プログラムの実装 (4)ロボットの自己位置・姿勢角同定プログラムの実装 (5)実験データ取得用無線通信プログラムの実装 2.制御実験結果と考察 実装した実験システムを用いて運動制御実験を行い,実機による本手法の有効性の検証を行った.本実験により,実機においてもシミュレーション結果と同様に,指定したべき関数に沿った経路生成および原点への収束といった目標とする大域的な運動制御が実現可能であることが確認できた.しかし,シミュレーション結果と比較すると,実機における運動では,とくに制御初期において回転角速度の挙動に違いが見られた.これは制御初期のモータ始動時における各車輪のモータ特性の違いから生じる現象と考えられ,これらの特性を考慮に入れた制御則の改良が今後の課題である.
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