研究概要 |
本年度は,主として,本申請で計画していたターンテーブル上の倒立振子実験装置の製作を行った.前年度までに,軸ねじれを有するターンテーブルに対するモデリングや制御系設計において,本申請で提案しているマルチタイムスケール分解制御を適用することの理論的可能性を検証した.本年度はこれをうけて,実験装置の部品の吟味および全体の設計を行った.そこでは当初計画していた実験装置の無駄な部分を切り落とし,また,安全面が不足していることを認識してこれを改善した.一方では実験装置にあわせたシミュレーションを繰り返し,制御系設計の方法を検証した.まず,予備実験においては倒立振子を取り付けない条件で,ターンテーブルの即応性を測定して,軸のねじれを評価した.この予備実験では,ターンテーブルの即応性に関する要求を,SICEベンチマーク問題の1つである多慣性系振動抑制問題に準じて設定し,それを満たすような性能を持たせるコントローラの設計を行った.そしてこの予備実験からこの装置のモデルを建てた.つぎに倒立振子を取り付け,これを事前に決めておいた性能を出すような,タイムスケール分解制御則を設計し,シミュレーションを行った後,実験装置に実装した.結果は良好で,従来からある数種類の設計方法と比較して,同等かそれ以上の結果を得,当初予定していた性能をほぼ達成することができた.この実験によって,本申請で提案しているタイムスケール分解制御の,モデリングから制御則の設計に至るまでの一連の作業を,検証することができた.今後,この検証により得られた知見を,他の対象物に対して利用できるよう,方法論の整備が必要であると考えている.
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