研究概要 |
実システムにおいては,化学プラントの制御や車の運転のように,状況によって複数の制御則を切替えて用いる場合が多い.このような制御系は連続時間的な変化と離散時間的な事象が混在するため,ハイブリッド制御系と呼ばれる.この制御系では,従来の連続時間制御では得られなかった性能が得られる一方で,制御則の不連続な切替えによって入力や状態の値が大きく跳ね上がるなどの問題が生じる.特に,実システムではモータ出力や機械の可動範囲など,入力や状態に制約があることが多く,このような挙動は望ましくない. 本研究では,制御入力の大きさに制約を持つChained Systemに対してスイッチング制御を行った場合の安定化条件を導き,制御則設計法を提案している.まず,Chained Systemを区分的線形システムとして捉え,各線形システムに対してCPI(Constrained Positively Invariant)集合を解析的に求めた.CPI集合は線形のLQ制御理論にもとづき,状態空間において対称性をもつ超楕円体として得られた.これらの楕円体の共通集合を求めることで,入力制約を満たす周期的な切替制御則による安定化の十分条件を得た.つぎに,この結果を任意の間隔で制御則を切替える場合に拡張した.切替間隔の平均値がある値以上であるならば安定化可能であることを示し,安定化の十分条件を導いた.この結果から,外乱によって切替タイミングがずれる場合に対してもシステムの安定性を保証する制御則が得られた.さらに,これらの制御則を車両型ロボットに適用して目標値への到達実験を行った.実験により,モータの最大出力値の制限や制御入力信号の離散値化を行う実システムでも目標値に到達できることを確認した.また,障害物など外乱の出現によって切替タイミングがずれた場合でも安定化できることを確かめた.
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