研究概要 |
流体系のバルブの開閉,電気回路における許容電圧の制限など,実際の物理システムのほとんどは飽和非線形要素を含んでいる.このような飽和要素を陽に考慮した制御系の解析・設計は,制御工学の重要な問題のひとつである.本研究は,このような飽和システムに対して,LPVシステム表現に基づく新しい解析・設計の手法を提案することを目的としている. 今年度の研究実績は,以下の通りである. (1)制御入力の振幅に飽和を有するシステムに対して,昨年度に導出した非線形行列不等式による局所的安定条件(論文掲載予定,研究業績の欄参照)に基づいた線形時不変(LTI)コントローラの設計法を提案し,従来設計法との比較を行った.その結果,線形解析(飽和回避)による設計法,円板条件に基づく設計法そしてポリトープアプローチによる設計法の3つのいずれよりも,提案の設計法の方が保守性の小さい良好な設計法であることが理論的に証明された. (2)提案の局所安定化LTIコントローラ設計法を,入力信号の振幅の飽和に加えて入力信号の変化率にも飽和が存在するようなシステムにも拡張した.この場合にも,提案設計法は円板条件よりも保守性の小さいことが,理論的に証明できた.この研究成果は,現在,論文投稿中である. (3)上述の結果は飽和システムのLPVシステム表現に基づいているが,LPVシステム表現の一つとして区分的アフィンシステム表現を用いた場合の,区分的2次形式リャプノフ関数による局所安定条件も導出した(研究業績の欄参照).この結果は,単一の2次形式リャプノフ関数に基づく安定解析・安定化よりも,保守性の小さい解析手法・設計法を導くための基礎となるものであり,今後の発展が期待できる. (4)本研究と関連して,Youlaパラメトリゼーションによるanti-windup制御系の解析・設計の枠組みを提案し論文発表した(研究業績の欄参照).
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