研究概要 |
本研究の目的は伝達関数的アプローチと多入力多出力系に有効な部分空間同定法を融合するようなアプローチを提案することである.伝達関数的なアプローチには雑音および状態による出力への影響を考慮することの困難さがあるために,必ずしも部分空間同定法に匹敵する精度の伝達関数的なアプローチによる向定法を得ることに成功したとはいいがたいが,伝達関数的なアプローチから部分空間同定法を考察することで以下の成果を得た. 1)直交射影による雑音除去を行なった後,推定結果を並べ変えてMOESP法を適用する方法(FIRによる解釈ができ,伝達関数的に考えることができる)とKatayama&Picciらの提案した外生入力を含む部分確率実現の比較を行った.部分空間同定法の観点からみていたときには同程度の精度の結果が得られるものと考えていたが,伝達関数的なアプローチの観点からこの比較を初めて行なった.この結果,振動的な極を持つ制御対象の場合には前者の方法では同定精度が極端に悪化する結果が得られ,システム制御情報学会ストカスティックシステムシンポジウム(SSS2002)で発表した. 2)FIRモデルの初期状態値を推定する方法を考察するために,有限次元に対する確率実現の予備的研究をさらに進めた.結果をIEEE Conference on Decision and Control(2002)に投稿したが,採用されなかったが,論文を修正してIFAC Symposium on System Identification(SYSID-2003)(査読のある国際学会)に投稿し,採用された.
|