研究概要 |
本研究では,正準変換およびそれに関連する技術を用いた物理システムの制御に関する研究を行った.まず初年度はその理論的な研究として,従来は簡単な機械系の安定化問題しか扱えなかった枠組みを一般化して,(1)非ホロノミック系や電気-機械系を扱えるようにしたこと,そして(2)状態フィードバックの安定化問題だけではなく,出力フィードバックの安定化問題や,軌道追従制御問題を扱えるように拡張した.また理論的な考察だけでなくその実験検証も行い,非ホロノミックの代表例である車両系の実験機を構成し,その安定化実験を行ったり,また当研究室が所有している磁気浮上系の実験機を用いて軌道追従制御の実験を行い,良い結果を得ている. 次年度は,主に初年度の結果を応用するための研究に取り組んだ.初年度の結果においては,設計の際に偏微分方程式を解くことが必要となるが,一般にこの方程式は解くことが難しく,特に劣駆動系などの複雑な系に対しては解を求めることは困難であった.このような背景から,テイラー展開に基づいて逐次的に上の方程式の近似解を求める方法について研究を行い,実用可能な設計手法を得た.さらに制御の難しい劣駆動系の例として1輪車両系の実験機を試作しその検証を行おうとしている.またこの年度には新たな研究の方向性の模索として,物理システムの最適制御問題を反復学習の手法を用いて達成する方法の基礎的な枠組みを開発した.これによって物理システムの特徴を引き出してやることにより,系の詳細な運動方程式を必要とせずに高精度な制御を行える可能性がある.このテーマについては引き続き研究を行ってゆく予定である.
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