研究概要 |
本研究では,入出力データに基づくシステム表現と制御方式に関して,データが不確かな場合が取り扱えるロバスト制御方式へと,理論的枠組を拡張することを最終的な目的としている.この目的に沿って,本年度は,以下のような成果を得た. まず,不確かさを扱う場合に鍵となる強正実性を取り上げ,外乱から制御出力へのシステムの特性が強正実となる制御系設計のための行列不等式条件について検討した.このとき,行列不等式条件は数値計算が困難な等式制約を含むが,これを回避する取り扱い方を論文発表した.これら知見は,不確かな(不等式で記述される)入出力データの(等式による)拘束をシステム表現とみなす,入出力データに基づくロバスト制御へ応用できると思われる. 次に,不確かなデータに基づいて構成されるモデル集合の大きさについて理論的な検討を加えるために,セットメンバシップ同定に注目し,データの個数と集合の大きさの関係についても考察した.そして,外乱や不確かさが適当な確率的条件を満たすとき,集合の大きさを信頼度付きで与えられることを明らかにし,学会発表を行った.これら確率的な考察は,不確かな入出力データに基づくロバスト制御を,適切に定式化する方法に適用できると思われる. さらに,不確かなデータを自然に取り扱いうるランダマイズドアルゴリズムについて考察した.問題が可解であるときに解を求めるアルゴリズムは既に提案されているが,問題が可解でないときにそれを知ることのできるアルゴリズムは知られていない.そこで,双対問題が可解であれば元問題が可解でないことを知ることができることに着目して,確率的な双対性を導入し,元問題に双対な問題を明らかにし,学会発表を行った.
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