本研究では、既存鉄筋コンクリート部材のマクロセル腐食速度を、非破壊試験で連続的に測定できるシステムを提案・検証した。 はじめに、供試体試験によるシステムの提案を行った。使用した供試体は、中央部に曲げひび割れを有する角柱モルタルである。この供試体を、塩害あるいは中性化促進環境下に暴露した後、次に示す方法でモニタリングした。まず非破壊試験で任意の時間毎における鉄筋電位、分極抵抗およびモルタル抵抗を測定した。次に、それらの測定値から、昨年度の本研究の成果を参考にしてマクロセル電流を解析し、さらにマクロセル腐食速度を換算した。その結果、マクロセル腐食速度がモニタリング測定できた。すなわち、非破壊試験により任意の時間毎に測定された鉄筋電位、分極抵抗およびモルタル抵抗を用いて、外部環境の変化に伴うマクロセル腐食速度の変化が確認できた。 次に、既存構造物試験によるシステムの検証を行った。測定対象は、石川県能登半島に位置する桟橋上部工の床板下面におけるひび割れ部とした。昭和14年に建設され、試験時までに63年が経過していた。これに対して、供試体試験で提案されたシステムを適用し、マクロセル腐食速度をモニタリング測定した。また既存構造物試験では、測定の際に得られた分極抵抗値を用い、既存の方法でミクロセル腐食速度もモニタリング測定した。その結果、既存構造物においてもマクロセル腐食速度がモニタリング測定できた。また、ミクロセル腐食速度よりもマクロセル腐食速度が速いことが認められた。すなわち、既存鉄筋コンクリート部材の鉄筋腐食を評価する際には、ミクロセル腐食のみならずマクロセル腐食も考慮しなければならないことが確認できた。 以上の研究の結果、供試体試験および既存構造物試験により、非破壊試験でマクロセル腐食速度をモニタリング測定するシステムを提案・検証できた。
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