研究概要 |
本年度は、昨年度に提案した景観定量化の指標を説明変量に用いて、アンケート評価を目的変量とする重回帰分析を行った。山と街並の二種類の背景に8種類の橋梁を組み合わせた計16枚の図案を用意して、被験者42人に図案の美しさを5段階で評価する形式のアンケートを行った。アンケートは一度に同一背景の8枚の図案を見せ,2種類の背景に対して2回に分けて行った.各図案からは背景と橋梁の輪郭線をそれぞれ抽出し、昨年度提案した方法に従って、標準偏差、正データ率、傾き、ばらつきの4つの数値指標をそれぞれ算出した。アンケートによる評価点を目的変量とし,4つの数値指標を説明変量として,各個人及び被験者全員の平均値に対して重回帰分析を行った.この際,ステップワイズ法を用いて,統計的に有意な最良回帰式を調べた.また、4つの指標からステップワイズ法で説明度が高い指標を選別し,山と街並のそれぞれの背景について,各個人ごとの評価点と被験者42人の評価点の平均値を対象とした回帰分析も行ってみた.本研究で用いた景観の定量化指標4つのうち,1つか2つは,アンケート調査で得られる個人または集団の景観に対する評価と統計的に有意な相関が認められることが分かった.特定の個人に有意となる指標が,背景によって同一でも,異なっても,同一背景という条件のなかでは,評価点をある程度予測することができるという可能性を示せた.但し,有意な相関を示す指標は個人によってまちまちであるため,全ての個人に共通して有意な相関を示す定量化指標というものは,今回の調査では見つかっていない.逆に言うと,価値観にばらつきのある個人や集団の景観に対する好みを予測するには,特定の1つや2つの指標を扱うだけでは不十分だということかも知れない.
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