研究概要 |
(1)研究代表者が先に提案してきた構造系信頼性設計手法を援用することで,構造系の信頼性を考慮した信頼性解析を行うことなく,設計対象構造系の破壊確率が要求信頼性レベル(目標破壊確率)を満足できる設計を可能にする安全係数の算定手法を体系化した. (2)橋脚の固有周期と降伏耐力比Ru(弾性応答水平力P_Hと橋脚の降伏耐力Pyの比(Ru=P_H/Py))より,エネルギー一定則から弾塑性応答変位を推定する際に含まれる安全マージンやばらつきを定量化し,信頼性解析で必要となる確率変数のパラメータの設定を行った. (3)断面形状やせん断スパン比などが異なる46基のRC橋脚を検討対象橋脚群として,提案手法により,その耐震設計に用いる基本安全係数を試算した.その結果,地震時保有水平耐力法により耐震設計されたRC橋脚の安全性指標βsysは,βsys=0.9〜2.4の範囲でばらついているのに対し,試算した基本安全係数と定義した設計規準式を用いることにより,確率・統計の計算を一切必要とすることなく,目標安全性指標に漸近したRC橋脚が耐震設計できることを確認した.また,構造系の信頼性が要求信頼性レベルを満足する設計とするためには,構造系信頼性評価法などを用いて,ある設計変数の変化が幾つかの限界状態の照査に及ぼす影響を考慮した上で,全ての設計規準式で用いる基本安全係数を一括して算定する必要があることを示した. (4)基本安全係数を算定した際に用いた加速度応答スペクトルとは異なる地震動を受けるRC橋脚の信頼性解析を行い,予め設定した目標安全性指標とのずれや橋脚毎のβsysのばらつきの大きさの変化を検証した.限られた検討結果ではあるが,基本安全係数を算定した際と異なる地震動の作用に対しても,橋脚毎のβsysのばらつきが大きく増加することはないことを確認した.
|