本研究の到達目標は以下の4項目である。 1.木橋の腐朽事例を収集・整理と腐朽しやすい箇所の特定 2.腐朽菌の鑑定による腐朽害の系統的評価と今後の劣化進行速度の予測 3.腐朽した部材の強度特性の解明、および構造上の重要度とあわせた評価 4.部材の腐朽劣化が橋梁全体の構造特性及ぼす影響の実橋実験による検証 本目標に基づいた2年間の成果を要約すると以下のとおりとなる。 ・木橋が再び見られるようになって10年あまりであるためそれらの多くは比較的新しく、腐朽事例はあまり目立たなかった。しかしその中でも腐朽が疑われる箇所は水回りの不備ときわめて明快な相関があった。近代木橋の中には水回りに対する適切な配慮が欠けているものが多く今後問題となることが予想される。 ・今後の劣化予測は維持管理と密接な関係があるため、一概な表現は難しい。劣化防止の観点からは適切な維持管理のあり方が示される必要がある。また木材腐朽菌は住宅等で知られているものが多く木橋特有の傾向は見られなかった。ただし、蟻害すなわちシロアリの被害は見られなかった。 ・木橋に使用されていた古材を回収し、強度などの物性試験および腐朽度診断を実施した。その結果、交換された部材でも強度面では十分な性能を有すること、腐朽が見られる部材でも一般の木材と同様な点検器具により物性を予測しうること等がわかった。 ・木橋部材に求められる性能は腐朽しないことではなく、腐朽が見られても必要な強度を有しているかどうかという点である。この点から、腐朽させないよう配慮しておくことはいうまでもないが、腐朽が進行しつつある部材の強度性能の評価が今後は重要になると考えられる。
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