研究概要 |
残留強度は排水せん断または定圧せん断においてせん断応力がピーク値を越え,漸次低下して究極的な定常せん断状態に達したときの値であり,再活動地すべり斜面の安定性を評価する指標の一つである.本研究代表者は,練返したカオリンの残留強度は,排水条件が近似的に成立しているせん断速度の範囲において,対数表示のせん断速度の増加に対して直線的に増加すること,せん断速度の増加に伴う残留強度の増加の度合いは垂直応力に依らずほぼ一定であることを示した.さらに,既往の研究結果を整理して,この他の種々の土においては残留強度がせん断速度の増加に対して増加・不変および減少するものがあることを示した.しかし,供試体の排水条件や周面摩擦力の影響はほとんど考慮されておらず,現状では上記のせん断挙動が統一的に説明されていないことを指摘した.本研究では,せん断速度を0.02〜2.0mm/minの広範囲で変化させたリングせん断試験の結果をもとに,種々の粘土の残留強度に及ぼすせん断速度の影響を検討した.主な知見は以下のとおりである.(1)排水条件が近似的に満たされるせん断速度領域では,残留状態の粘着力はせん断速度の変化に対してゼロと仮定できるので,残留状態の内部摩擦角が対数表示のせん断速度の増加に対して直線的に増加する.(2)他の土試料の場合も,排水条件を近似的に満たすせん断速度領域では,残留強度は対数表示のせん断速度の増加に対して直線的に増加する.(3)上記のせん断速度領域におけるせん断速度の増加に対する残留強度の増加の度合いは2〜6%程度である.(4)粘土含有量,塑性指数あるいは活性度が大きい土試料ほど,せん断速度の増加に伴う残留強度の増加の度合いは大きくなる傾向にある.(5)残留状態における供試体の含水比はせん断速度の増加に対して減少する傾向にあり,せん断面付近の間隙比の減少が上記(2)の原因として指摘できる.
|