研究概要 |
本研究では、当該研究者らが開発してきたマクロ水文モデルを中国淮河流域(140,000km2)に適用し、多地点での河川流量を算定してモデルの実用性を検証することを目的とした。入力データセットとして、田中(京大防災研)によって作成されたEEWB data set (version 1.0)、およびGAME再解析データversion 1を用いて、淮河流域の流出シミュレーションを実行した。また、流出シミュレーション結果をもとに、大河川流域で必要となるフォーシングデータの分解能と対象流域の面積との関連を分析した。シミュレーション期間は1998年5月1日から1998年8月31日の4ヶ月間である。得られた成果の概要を以下に示す。 1)EEWBデータセットを用いて流量シミュレーションを行った結果、対象流域下端のBengbu(130,000km2)での流量流量シミュレーション結果が特に7月以降で観測値を下回ることが明らかとなった。この原因としては、特に入力データとして用いたEEWBデータの遮断蒸発量が過大評価していることが考えられた。これをもとに、田中らによってEEWBデータの修正がなされた。新たなEEWBデータでは蒸発散量の値が改良されており、これを用いた流量シミュレーションは来年度の課題となった。 2)GAME再解析データを入力データとして流量シミュレーションを行った結果、1.25度空間分解能データを用いた場合には、良好な河川流量の再現結果が得られた。これは、ある程度以上の面積を持つ流域ならばグローバルなスケールでの気象モデルを用いて十分河川流量が再現・予測できることを示している。 3)河川流量の再現を図る場合、入力データ(降水量・蒸発散量)として、どの程度の時間・空間分解能が要求されるかを対象とする流域面積との関係で調査した。その結果、少なくとも流域面積の1/10程度の空間分解能が、入力データセットとして要求されることがわかった。
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