研究概要 |
河道内の動植物の生息空間の多様性を保存・創生するためには,河道内の物理的環境の多様性を保存・創生する技術の確立が不可欠である.本研究では,河道内の物理的環境を決定する重要な要素として砂州の動態と河床材料の粒度を考え,次の課題に焦点を絞って検討を進めた.1.砂礫の分級現象が河床縦横断形の決定機構に与える影響,2.複数の低水流路を有する河床の形成機構,3.植生繁茂が砂州の形状特性に与える影響.これらの課題の内,課題1と課題2については,平成13年度までに一定レベルの知見が得られている.平成14年度は,以下のように,これまでの研究と課題1と課題2の成果をもとに課題3を実施するとともに,低水流路内の河床材料の粗粒化,低水流路本数の減少,低水流路の固定化など,河道内の物理的環境の多様性を喪失していると考えられる現象のメカニズムを明らかにするとともに,多様な水辺空間を創生するための一方法を提案した. 1.植生繁茂が砂州の形状特性に与える影響 植生繁茂が砂州及び流路の時空間的な変動特性に与える影響を水路実験と数値解析により明らかにした.また,砂州の発達が顕著な徳島県・那賀川を対象として,これまでの植生群落分布の実態調査に加えて,河床材料の粒度の平面分布について現地調査を行うとともに,植生繁茂が河床材料の粒度の平面分布と河床形状与える影響を明らかにした. 2.多様な水辺空間を有した河床縦横断形の予測と制御 近年,多くの日本の河川に見られる,流路本数の減少及び流路安定化現象を,ダム貯水池等による洪水ピーク流量の減少,供給土砂量の減少,砂州上の植生繁茂,河道内の砂利採取に着目し,数値解析により再現するとともに,これらの現象のメカニズムを明らかにした.また,流路本数の減少及び流路安定化現象により,河道内の物理環境が単調化することを明らかにした.さらに,網状流路の時空間的な変動特性を利用した河道内の物理環境の多様性の創生方法を提案した.これにより,局所的な多自然型河川工法や植生の管理などをほとんど行わないでよいメンテナンスフリーの多様な水辺空間づくりが可能になると考えられる.
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