研究概要 |
先進国において開発された都市交通システム分析のための簡易計画モデルは,途上国での同様の分析に適用可能と考えられているものの,データ不足など多くの制約条件からその適用性は必ずしも明確ではない.本研究は,そのようなモデルの一つであるCODINA(比較的少ないデータおよび計算量で交通政策の評価を行うもので,都市活動と交通システムを連続表現と離散表現とを組み合わせて構築したモデル)を途上国の交通政策アセスメントに適用した場合の有用性を,ジャカルタ中心地域をケーススタディとして検討することを目的とした.具体的には,ジャカルタの鉄道輸送システムを離散化ネットワークで表すと同時に,ジャカルタの都市化された全領域を1つの主領域と4つの副領域,さらに29個の有限要素に分け,二つの交通モード;自動車交通と鉄道交通についての分析を行っている.その際,非集計データの欠乏に対して,CODINAで必要となるトリップの目的地とモードを与える結合選択モデルを構築する実用的手法を提案した.これは,簡単に適用可能な重力モデルと非集計選択モデルとを結合したものである. この提案モデルに基づき,Jabotabek線の運賃引き上げ策,ガソリン料金や駐車料金の引き上げ策,バス料金の引き上げ策,バス交通量の変更策など,種々の異なる政策についてシミュレーションを実施した.シミュレーションの結果は極めて妥当なものであり,提案した簡便法は途上国の都市交通システムの分析に適用可能であると結論できる.このように,都市空間と交通システムの連続/離散表現により,離散化要素に焦点を当てた政策分析が可能となったが,交通ネットワークの密度表現や連続ネットワークでの定式化に問題が残り,さらなる研究が必要である.
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