研究概要 |
この研究は,高齢者・障害者の体機能と移動との関係を把握し,高齢者・障害者の移動性評価を行った上で,歩行空間上で必要な情報提供のあり方を考察することが狙いである.今年度は,昨年度に実施した移動に関する活動能力に関する調査結果をもとに,高齢者・障害者が歩行空間上で必要な情報について研究を進めた.これらの知見として(1)元気な高齢者でも何らかの持病(高血圧・糖尿病・関節痛など)を抱える高齢者がほとんどであり,従来のADL(日常活動能力指標)などの項目では何ら問題のない高齢者でも移動に際してはこれらの病気が負担となることが分かった.また,電動車いすの利用で高齢者のモビリティは2〜3kmに伸びるという予測が出来た.また,活動能力は高齢者のライフスタイルにも密接に関係しており,今回明確になった活動能力が高くても移動制約のある高齢者に対応しうるような移動能力評価の必要性が課題として挙げられた. (2)今回調査した高齢者の大部分はインターネットなどに興味を有しているが,使用していないことが分かった.しかし,興味を持っている高齢者も相当数おり,彼らは使用したいが出来ない層であることが分かった.日常の活動能力は問題のない高齢者もパソコンや携帯電話の利用に関してはだれかの援助が必要と感じている高齢者が多く,ITSなど高度な情報提供手段を高齢者が利用するには何らかの促進策を講じる必要なことが分かった. (3)とくに視覚障害者はITSなど高度な情報提供装置にもいくつか危険があることを指摘しており,現存の点字ブロックなどとの機能分担等が必要なことが分かった. (4)実際の駅ターミナルなどを対象として高齢者・障害者の属性ごとに移動性の負担評価をすることが出来た.その結果,各属性ごとにいくつかの特徴が把握でき,駅ごとの施設改善度を算出することが出来た.
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