研究概要 |
本研究は,木造建築物の耐震安全性を向上させることを目的に,建築物の強度・剛性が調整可能で,設計自由度が高く,かつ力学的に優れた抵抗要素としての木・鋼ハイブリッド耐力壁を開発することである。 平成13年度の実験的研究により,木造軸組に薄い鋼板を取り込む場合,有効な面外補剛が必要となることが分かった。従って,本年度の実験では,面外補強効果を重視し,三尺試験体を用いて,ハイブリッド耐力壁の構造性能を調べた。 試験体は木造軸組(幅910mm,高さ910mm)と木造軸組に組み込んだスリット入り鋼板耐震補強要素で構成される。スリット入り鋼板のスリット間隔を25mmと50mm,スリット長さを250mmと500mmとした。それらの組合せにより,基本的な4種類のスリットパターンを実験変数とした。鋼板と木造軸組との接合にはZN65の釘を用いた。木造軸組には,柱(スギ材,JAS乙種1級,断面105X105mm),土台(スギ材,JAS乙種1級,断面105X105mm),梁(べいまつ,JAS甲種1級,断面180X105mm),間柱(スギ材,JAS乙種3級,断面45X105mm)を用いた。面外補強は柱状部(スリットを入れた部分)と壁部(柱状部以外の部分)に分けて,各々に行った。同様なスリットパターンの鋼板に対し,面外補強を行わない場合と行う場合のハイブリッド耐力壁の構造性能を比較し,補強効果を検討した。面外補強の無い試験体は早期に面外弾性曲げ捩れ座屈が発生し,計算耐力を十分に発揮できなかったが,柱状部幅(スリット間隔)25mm・長さ250mmの試験体が構造性能を発揮しやすいことが分かった。一方,面外補強を施した試験体は大きなせん断変形まで面内で挙動し,荷重-変形曲線が紡錘型となり,安定した挙動を示した。また,補強することにより,エネルギー吸収能力も大きくなり,壁倍率も高くなった。 本研究の内容をH14年度日本建築学会九州支部研究発表会(平成15年3月9日,沖縄国際大学)で発表した。
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