研究概要 |
本研究は,動的熱負荷計算プログラムに容易に組み込めるような形で,熱橋を含む壁体の計算を行う方法を開発することを目的とする.昨年度,熱橋を含む部位を一般部と熱橋部の2つの1次元的に熱流が生じる壁体に置き換え,熱応答が最大となる位置の値を熱橋部の熱応答とし,熱貫流率が合うように熱橋部面積を調整するという方法を提案した.この方法は単純に壁体が増えるだけなので既存のプログラムヘの組み込みにはほとんど支障が無く,結露判定で必要となる最低壁面温度と壁体を通過する熱流量を両方とも近似することができる.熱橋部の伝達関数は,正のラプラスパラメータを与えて2次元の差分法により計算した貫流・吸熱伝達関数を精解とし,一般部の伝達関数との差を取ることことにより求める.応答係数法をベースとする熱負荷計算プログラムであれば伝達関数を数値ラプラス逆変換するだけであるが,差分法や有限要素法をベースとする熱負荷計算プログラムの場合は,熱橋部の伝達関数を再現できるような仮想的な壁体を構成する必要がある.今年度は,2層3節点壁体や3層4節点壁体を具体的に構成する方法について検討を行い,熱貫流率及び熱容量を保存するようPade近似する方法が有効であることがわかった.この際,1次元壁体の離散化モデルとして,熱容量を集中化したモデルでは単層壁で熱容量配分が熱抵抗配分と異なってしまうという不自然な結果が生じるため,熱容量を集中化しない有限要素法モデルを用いて壁体を構成するが妥当であること,柱・梁・庇等,突出部がある場合は実表面積が平面への投影面積より大きくなるため,貫流の生じない純蓄熱要素を導入する必要があることを示した.
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