研究概要 |
本研究は,自治体の地域防災計画策定時において,住宅再建支援政策を検討する際に必要な情報を提供しうる地震被害想定手法を提案することを目的としている.住宅再建問題の発生メカニズムを分析し,これを反映させた地震被害想定手法を開発した.具体的には,以下の研究を行った.(1)復興期における政策課題の理解と復興期における住宅再建及び復興問題の構造分析,(2)復興期における政策課題に対応した想定すべき災害様相の抽出,(3)地震被害想定手法の開発及びそれに必要な調査の実施,(4)ケーススタディによる地震被害想定手法の有効性の実証. まず,これまでの申請者の研究蓄積をベースに,文献調査,復興関係者や復興をテーマとする研究者との議論を通して復興期における住宅再建問題を,(1)仮設住宅供給のあり方,(2)恒久住宅供給のあり方,(3)復興まちづくりのあり方,(4)自力再建に対する支援のあり方,の4つの観点から再整理した.次に,阪神淡路大震災の住宅再建問題の構造を分析し,住宅再建問題を規定する変数を抽出した.被害の地域分布,及び,被災者の社会階層分布と,仮設住宅や恒久住宅政策の地域分布や社会階層分布とに差異が生じていることが明らかになった.さらに本研究と並行して開発を行っている地震被害想定システム上に必要なデータを入力・整備し,地震被害想定システムの中に住宅再建方策が検討できるアウトプットをだす建物被害想定手法を組み込んだ.なお,ここでは,ある自治体の協力を得て,実際のデータを整備し,関係職員とのディスカッションを通して本手法の有効性を検証しているところである.
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