研究概要 |
本研究では,日本の郊外戸建て住宅地を対象に,その住環境の変容プロセスを明らかにするとともに,居住者による住環境の共同管理手法の構築のための知見を得ることを目的としている。 初年度には,1990年代に街並みの形成を意図して開発された戸建て住宅地,青葉台WEおよび湊坂の2地区を対象に,その住環境の変容プロセス,及びそこで行われた居住者による住環境の共同管理の実態について明らかにした。その結果,青葉台WEでは,建築協定等のルールを厳格に運用し居住者全員の住空間への働きかけ行為を規制する「街並み維持型」の共同管理が,湊坂では,ガーデニングという形での居住者の個別の働きかけをむしろ推奨し,ボランティア組織による会報等のメディアを使ってそのアドバイスを与えることにより,変容を許容しつつもその方向性を共有するような「街並み誘導型」の共同管理が行われていることが明らかとなった。 ここで筆者は,商品としての住宅のスタイルが次々と変化し,それにつられる形で既存の住宅地の住環境が不安定な状態にある日本においては,特に後者の,秩序を保ちつつ変化を誘導する「街並み誘導型」の共同管理に可能性があると考える。 そこで,本年度には,モデルスタディとしてこの湊坂を対象とし,居住者に働きかけて街並みに関するワークショップ等を開催することによりシステマティックな共同管理の仕組みづくりを目指す,アクションリサーチを行った。ワークショップのテーマとしては,街並みの将来イメージの共有の手段として,「街並みデザインガイドブック」の共同編集・発行を設定した。実際のプロセスでは,居住者各自が持つ街並みに関するノウハウを収集し,ワークショップを通してその価値付けを行い,最終的には冊子を編集し全戸に配布した。 最後に,このモデルスタディの分析を通して,街並み誘導型の共同管理手法の可能性と,その構築に際しての課題を明らかにした。
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