研究概要 |
本研究は,近世権力(幕府・藩)が政治的意図をもって発令した法令と建築遺構とを比較検討することで,法令の運用方法の詳細と法令が近世寺社建築や寺社境内の形態に与えた影響を考察し,同時に権力との緊張関係の中で行われた建設プロセスの意味を検討することを目的としたもので,2年計画で実施した。 研究計画の第1年次にあたる平成13年度には、史料収集と既入手史料等の整理に重点をおいて,(1)調査活動特に建築物及び史料の記録整理に必要な機器及び史料整理用のコンピューターの購入,(2)都内に所在する史料の所在調査,(3)既入手史料及び関連先行研究の整理を中心に実施した。 平成14年度は,上記(2)及び(3)を継続して行い,境内利用形態の変遷を追うための『御府内沿革図書』など刊行史料の購入や,地方寺社の事例として17〜18世紀に幕府・藩の支援のもとに神仏分離を実施した島根県の神社関係造営史料を複写等の上入手した。また,これまで収集した資料をもとに,特に権力からの規制が厳格だったと考えられる寺社境内内の住宅系遺構について,相互比較を可能とするための図化作業を行った。 以上,平成13〜14年度は今後の研究に用いるための史料収集と図化作業を中心に実施し,直接の研究成果の発表を行っていない。しかし,得られた史料の一端を用いて,公表を予定している論文(近世寺社建築に関する通史的内容のもの1編及び住宅系寺社建築に関する内容のもの1編)の執筆を行い,また出雲大社境内に所在する建築の文化財的意味付け作業を行った。
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