研究概要 |
本研究では研究代表者が新規に開発した相対論的配置間相互作用計算プログラムを活用して、希土類イオン固体レーザー材料における光学スペクトルの解析や遷移金属化合物におけるX線吸収スペクトル吸収端近傍微細構造(XANES)の解析を行った。 まず、固体レーザー材料については、Ce^<3+>,Pr^<3+>,Nd^<3+>などの軽希土類イオンに加えて、Yb^<3+>イオンの4f5d遷移スペクトルの第一原理計算を行った。Yb^<3+>の場合は、13次のスレーター行列式を924個用いるという超大規模計算となるが、対称性を具体的に考慮することによって、計算の効率化・大規模化を実現する計算プログラムを前年度に開発したことにより、このような計算も実用的な速度で実行することが可能となった。CaF_2中のPr^<3+>,Nd^<3+>,YPO_4中のYb^<3+>などについて、実験によって観測されている4f5d遷移スペクトルを第一原理計算によって再現すると共に、ピークの起源を明確にすることができた。 一方、X線吸収スペクトル吸収端近傍微細構造については、遷移金属L_<2,3>吸収端などでは、磁場を印加することにより、円二色性が現れ、磁性の解析に有効であることが知られている。現在の計算プログラムでは磁場の効果を直接考慮することはできないが、2重群の対称性を利用して、磁気量子数の異なる状態をある程度区別することは可能である。したがって、遷移の始状態を区別することにより、無限小の磁場に対応した磁気円二色性の計算が可能となる。今回、この手法を用いて実際にNiOのNiL_<2,3>吸収端の第一原理計算を行った結果、パラメーターを一切用いることなく、遷移金属化合物における磁気円二色性の計算が可能であることが示された。
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