研究概要 |
今年度は粒子サイズと硬質磁性の関係、基板拘束による応力と外部磁場による磁化容易軸(C-軸)配向制御の可能性、長距離規則度の決定の3点を検討した。まず、2nmサイズのFePtナノ粒子においても規則構造は形成されたが、室温で1kOeを超える保磁力を得るためには8nm以上の1粒径が必要であり、高配向・高分散・高保磁力を有するFePtナノ粒子を作製するためには、基板温度673K以上での蒸着と873K以上の温度での規則化熱処理が必要であることが判明した。単結晶基板の拘束によりFePtナノ粒子は<001>FePt||<001>NaCl,{001}FePt||{001}NaClの方位関係でエピタキシャル成長し、生成する規則相が正方晶であることからその磁化容易軸であるc-軸には空間的に3通りの配向が存在する(FePdにおいても同様)。そこで蒸着後に基板を溶解除去した試料とナノ粒子を基板上に担持したままの試料について熱処理を行い規則相粒子の粒配向を調べた結果、両者で顕著な差異は認められなかった。FePt, FePdナノ粒子ともに基板拘束力は蒸着時の結晶成長初期過程で粒配向に影響するが、その後の熱処理過程での粒配向変化にはほとんど影響が無いといえる。規則化過程に及ぼす外部磁場の効果を検討したところ、磁場印加のもとで693Kにて8h熱処理して規則化させた試料においてc-軸がほぼ膜面垂直方向に配向していることが判明した。よって磁場中熱処理はFePtナノ粒子の磁化容易軸配向制御に有効であるといえるが熱処理温度が磁気転移温度以下に制限されるため、より短時間の熱処理で十分に規則化させ高保磁力を得る方法を検討する必要がある。電子回折とマルチスライスシミュレーションによりナノ粒子の長距離規則度測定(S)を行った結果、室温で3-5kOeの保磁力を示すFePt, FePdナノ粒子においてそれぞれ約S=0.5,0.8という値を得た。
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