研究概要 |
本研究では材料中の転位や析出物等の周りに発生する微小歪場を,汎用の透過型電子顕微鏡を用いて測定する新たな手法について研究を行った.具体的には測定の対象とする微小領域で,収束電子線を絨毯爆撃的に入射するとともに高次ラウエゾーン(HOLZ)図形を撮影し,HOLZ図形のズレ方向かち結晶格子面の歪みをベグトルマップで表した. らせん転位線と平行に観察した場合,格子面がらせん状に歪んでいる様子が再現できた、刃状転位線と平行に観祭した場合には,平面歪み条件下であるにもかかわらず,山なりの歪みが生じていることがわかった.これは試料の薄膜化に伴って,転位線に沿った応力成分が歪みとして現れたものと解釈できた. 析出物周りの測定では析出物の形状に伴って,母相の歪場形状が著しく変わることが分かうた.1つの析出物周りで表面から山状の歪場が観察された場合,裏面から同一析出物を測定すると,全く正反対の谷状の歪場として測定され,本手法の妥当性が示された。さらに同一形状の析出物でも母相界面が完全整合な場合は,析出物を中心として対称な歪みが形成されているのに対し、ミスフィット転位がある場合には非対称な歪場が形成されていることが再現でき,測定感度の高さが証明された. 本手法では格子面の傾斜歪みを0.01°以下で検出でき,測定空間分解能はデータ処理の都合上14nmで行ったが,データ処理の制約を除けば1nmまで可能である.実際の測定において0.2μm×0.2μm領域を約200点分割領域で測定する場合,測定そのものは20分程度で終了するが,その後のデータ処理に膨大な時間と労力を要した.その点を解決するためソフト化について検討したが,可能性は十分あるものの解析精度および予算の都合上断念せざるを得なかった.
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