研究概要 |
本研究は、Nd-Fe-B系薄膜磁石をはじめとする希土類-遷移金属磁性体について、硬X線MCDを用いた元素選択磁気ヒステリシス(ESMH : Element Specific Magnetic Hysteresis)をSPring-8において測定し、元素選択磁化測定技術と解釈を発展させること、さらに、硬X線ESMHと通常の磁気ヒステリシス曲線とを比較して、(1)硬X線ESMHの特徴、問題点についての知見を得ること、(2)Non-collinear磁気構造(希土類と遷移金属の磁気モーメントが平行に揃わない磁気状態)における、希土類と遷移金属の磁気モーメントの挙動分離を具体的な目的とした。この計画で硬X線を用いることを優先した理由は、次の[1],[2]の理由による。[1]軟X線は試料を超高真空下に置くことが必要である点で実験が難しいが、硬X線ではその必要がなく簡便である、[2]試料への強磁場、高圧などの印加が容易であり、多彩な試料環境下で測定が可能である。SPring-8の共同利用研究採択課題「希土類元素L吸収端における四重極遷移XMCD理論の実験的検証」でESMの予備調査を行い、続いて課題「XMCDによる元素選択的磁気測定を用いた希土類合金のNon-Collinear磁気構造解析」において、DyCo_5合金におけるDy, CoのESM実験を遂行した。本結果は硬X線ESMの性質を細かく調べた結果であり、論文を準備中である。論文に先だって学会発表を行ったところ、Spring-8における注目すべき研究成果トピックスとして「SPring-8 Research Frontiers 2001/2002」に原稿執筆依頼を受けている。
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