研究概要 |
本研究では,ホイスラー合金を電極とした強磁性トンネル接合の作製し,その磁気抵抗効果と電極の構造を明らかにすることを目的として実験を行った.ホイスラー合金としてはCo_2MnT(T=Ge, Si)ならびにCoCrFeAl合金について実験を行った.成膜は基板加熱機構付マグネトロンスパッタ装置を用いて行った.T=Geの場合,573Kの基板温度で,T=Siの場合は,673Kの基板温度でスパッタした場合,L2_1構造となることが明らかとなった.また,この試料では,それぞれ1000ならびに800emu/ccとバルクの飽和磁化とほぼ同程度の値を示した.このホイスラー合金を電極とする強磁性トンネル接合の作製を試みた.この際,絶縁体は従来のAlの酸化物を用いた.しかし,磁気抵抗比はほとんど得られなかった.この原因は,L2_1構造を得るために,基板温度を高温にしたために,表面荒さが増加したためと考えられる.これはX線による反射率測定の結果と一致する.次に,CoCrFeAlの作製を試みた.基板温度が室温の場合,B2構造が得られることが分かった.この試料では393emu/ccの飽和磁化が得られ,ボーワ磁子が約2.04であった.この合金を電極とする強磁性トンネル接合を作製した結果,室温で16%,5Kで26%の磁気抵抗比が得られた.フルホイスラー合金を用いた強磁性トンネル接合では,トンネル磁気抵抗効果をはじめて観測したものである.
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