本研究の目的:太陽電池用の多結晶シリコンは融液成長により作製されているが、その成長機構はあまり理解されていない。本研究では、1500℃までの範囲で温度制御できる小型炉と顕微鏡を組み合わせた、融液成長過程その場観察装置を新たに作製した。本装置を用いてシリコンの融液成長過程を直接観察し、成長機構を明らかにした。 結果:まず、方位が既知の種結晶を用いて成長界面形状の成長方位依存性を調べた。(111)種結晶を用いた場合、成長界面はフラットであるが、(100)種結晶では、成長界面にファセットが形成した。次にこの二種類の種結晶を並列に配置し、両方の種結晶から同時に成長を行った。冷却速度が5℃/minと遅い場合、それぞれの方位から成長した結晶粒の成長速度は同程度であった。一方、冷却速度を100℃/minと速くした場合、(100)から成長した結晶粒の方が約1.3倍成長速度が速かった。このような成長の場合、成長速度が速い結晶粒が成長に伴い遅い結晶粒を覆うように、成長方向と垂直方向にも成長する過程が観察された。つまり、冷却速度が速い場合、融液の過冷却度が大きくなり、結晶方位による成長速度の差が顕著になる。従って、結晶成長過程において競争的結晶粒成長が起こることが明かとなった。また、種結晶を用いずに速い速度で冷却した場合、不安定な成長界面の突起部から急激に成長する異常成長が観察された。 まとめ:シリコンンの融液成長過程の直接観察に成功した。シリコンの融液成長において、融液の過冷却が大きくなると結晶方位による成長速度の差が大きくなり、成長の速い結晶粒が成長の遅い結晶粒を覆うように成長する競争的結晶粒成長が起こる。このことは多結晶シリコンの方位制御技術に利用できる知見である。
|