研究概要 |
平成14年度では,平成13年度中の研究によって開発したCu-Co-Cr合金において,強度と導電性に加え磁気的性質にも注目し,磁化のCo/Cr組成比依存,熱処理温度依存,熱処理時間依存を調べた.Coに対するCrの相対濃度が増すにつれ,合金の飽和磁化は急激に減少することがわかった.Co-Cr粒子中のCr濃度が20%をこえると,合金は磁化を示さなくなる.また,飽和磁化を最大にする最適の時効温度が約600℃であることを見いだした.500℃の時効では,磁化の時効時間依存性が現れ,ナノサイズのCo-Cr粒子の超常磁性的振る舞いによるものと理解できた.Cu-1.94vol%Co-0.24vol%Cr合金単結晶から得た結晶磁気異方性定数は,約-15000J/m^3であり,fcc Coの1/5程度の大きさであることがわかった.さらに,時効後の合金を組成変形させると,Co-Cr粒子の一部が相変態し,同時に形状変化を伴うことにより,形状磁気異方性発現することがわかった. Cu-Cr合金を用いて行った転位上優先析出に関する研究では,転位が析出粒子の優先核生成サイトとなり得ることに加えて,優先析出するCr粒子バリアントが転位の性質に大きく依存することを明らかにした.転位の周りの応力場と析出粒子が持つミスフィットひずみの弾性相互作用エネルギーを求めることにより,優先析出しやすいバリアントを予測することが可能であることを示した.
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