研究概要 |
本研究は,ニッケル基超合金の応力下でのクリープ破壊の非破壊検査手法の確立を目的として,その評価法の検討と,クリープ強化に関連するラフト化機構の解明を行ったものである.本合金は,高温・低応力の環境でクリープさせると,その内部組織が立方状組織からラフト組織(応力軸方向に垂直な板状組織)に変化し,あるとき突然そのラフト組織は崩壊して,急速にクリープ変形が進行する.ここで解決すべき問題が二つある.一つは非破壊余寿命の直接的な評価であり,もう一つはラフト形成および崩壊のメカニズムを解明することである. 弾性的な観点からは,立方状組織は巨視的にみても立方対称性をもつが,ラフト組織の場合は正方対称性を有し,ラフト組織が崩壊したときは,弱い正方対称性を示すと考えられる.そこで,この弾性的性質の変化(弾性異方性)を超音波共鳴法を用いて測定した.その結果,ラフト組織の場合は,正方晶の弾性異方性が出現することが明らかとなった.しかし,その弾性異方性は室温では小さく,ヤング率の場合E_<100>/E_<001>=1.003程度であったが,高温ではその異方性は逆転して大きくなり約E_<001>/E_<100>=1.02程度になることが明らかとなった.この結果は,マイクロメカニクスモデルによっても定性的に示すことができた.ラフト組織の崩壊直前および直後の弾性異方性については,試料は現在作製段階にあり,今後その変化に興味が持たれる.一方,ラフト化機構の弾塑性論的考察も行ったところ,ラフト化は弾性論のみの観点からは説明できないことを示すことができた.つまり,クリープ初期において導入される界面転位が,格子ミスフィットを異方的に緩和し,それによって方向性のある粗大化,つまりラフティング,が起こることが明らかとなった.このことより,ラフト形成には,γおよびγ'の格子定数の差が非常に重要な因子であることが明らかとなった.現在このメカニズムを基にラフト崩壊の機構を検討している.
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