研究概要 |
ソノケミカル反応機構をより詳しく解明するため,反応場中のキャビテーションの活性、分布,個々のキャビテーションの生起とそれらに伴い化学反応の定量的な解析が不可欠となる。本研究はまず、電気化学発光(Electrochemiluminensence)計測システムと超音波反応システムとなるSono-electrochemiluminensence(略Sono-ECL)システムを構築し、超音波反応場の可視化ないしは超音波で誘起した化学反応の解析を行った。50μMルミノールを含む緩衝溶液(pH=10)の中では、電極に0.65V vs.Ag/AgC1以上の電位を印加するとルミノールが酸化され、それと溶液中OH^-との相互作用により発光現象が見られた。この発光強度は超音波照射により強く増幅することを見出した。超音波の物質移動促進効果によりルミノールの電気反応が促進された他、キャビテーションにより生成したOH・やH_2O_2などが電気化学発光反応に関与していることが考えられる。Sono-ECLの発光強度は酸化電流の大きさと相関関係を示し、反応場の中微小電極と光ファイバープローブをX-Y-Z軸方向にマッピングすることによって超音波反応場の可視化を達成できた。また、直径7μm以下の微小電極を用いた1000V/s以上の超高速ボルタンメトリーでは、超音波照射下での有機溶媒と水溶液の中で異なるFe^<2+>/Fe^<3+>の電気化学挙動が示され、水溶液中超音波キャビテーションに誘起されたOH・などの中間体の生成を確認できた。最後に、超音波キャビテーションの効果を利用して、ダイオキシンの前駆体であるクロロフェノール類の電気分解に応用した。超音波照射下では、クロロフェノールの分解速度が著しく促進され、電解と超音波キャビテーションの相乗効果が認められた。また、HPLCによりクロロフェノールの分解物などの分析も行った。 超微小電極は,キャビテーションバブルのサイズより小さいため優れた空間及び時間分解能を有し、キャビテーションの寿命、分布、活性、誘起した化学反応などの多次元の情報量を得ることが可能であった。
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