研究概要 |
尿素分解酵素ウレアーゼを用いた尿素の加水分解を利用した均一沈殿法により、硫酸アルミニウム、デキストラン硫酸ナトリウム、水、尿素、ウレアーゼを原料として、水酸化アルミニウム/デキストラン硫酸イオン複合体粒子が生成した。この複合体を熱処理すると、粒子内に数nmから数十nm程度の泡状ナノ構造が生成した。有機分子は600℃以上で完全に脱離してアモルファスアルミナ粒子が生成し、900℃におけるγ-アルミナまでは泡状ナノ構造は保持されたが、1100℃でのα-アルミナ化とともにナノ構造は完全に消失した。またTEM観察及び比表面積測定の結果から、泡状ナノ構造は粒子外部とは通じておらず、多量の内部空隙を有する低密度なアルミナ粒子が生成していると考えられる。近年、ナノ構造セラミックスが低誘電率材料として注目されており、本研究で得られたアルミナも同様な特性を示す可能性がある。また、高断熱性や高遮音性を示すと考えられる。 複合体粒子の粒径は比較的揃っており、デキストラン硫酸ナトリウムの分子量により制御が可能で(分子量2500:0.1μm,分子量5000:0.2μm,分子量500000:0.7μm)、いずれも同様な熱処理によって泡状構造アルミナへの変換が可能であった。複合体粒子は熱により簡単に構造が変化するため、比表面積等特性の特性を測定できていないが、高い吸湿性を示すことを確認しており、吸着剤への応用が可能な比較的比表面積の高い粒子であることが推察される。一方、尿素の加熱加水分解により同様な合成を行ったところ、粒子中への有機分子の複合化量も少なく、粒径も大きくばらついており、酵素法による複合体の合成が優れていることが明確になった。
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