研究概要 |
5,5'位に2つのポルフィリンをもつ2,2'-ビピリジン(1)を合成し、1とRuCl_2(DMSO)_2錯体を3:1の比率で混合、加熱撹拌することで計6枚のポルフィリンを有するトリスビピリジンルテニウム錯体(2)を合成することに成功した。錯体2は2組のトリスポルフィリンがルテニウムを境に向き合うような構造をしており、トリアミンのような三官能性の分子を2分子捕捉することが予想された。 4種類のトリアミン(2,2'-ビス(アミノメチル)プロピルアミン(3)、トリスアミノエチルアミン(4)、トリスアミノプロピルアミン(5)、1,3,5-トリアミノメチルベンゼン(6))と錯体2の複合体形成を紫外可視吸収スペクトルや滴定型熱量計を用いて調べたところ、いずれのトリアミンも錯体2と2:1錯体を形成することがわかり、その結合定数は10E6以上ととても大きな値であった。特にアミン4と錯体の結合定数は1つ目の結合定数K_1≧10E8、2つ目の結合定数K_2≧10E7であり、4つのトリアミンの中でもっともゲスト錯体2に適合することがわかった。錯体2とアミン4の1:2複合体の^1H-NMRスペクトルが1種類のポルフィリンとピリジン部のみのシグナルを示したことから、複合体が対称性のよい構造をしていることがわかった。また、ポルフィリン環によって遮蔽された水素原子の帰属とNOEによるプロトン間の空間配置の検討により、複合体はポルフィリン環3枚がねじれることによって三角形を形成し、その中にゲスト分子であるトリアミンが包摂されていることが明らかとなった。
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