研究概要 |
メタロセン触媒を用いて種々の8の字らせん構造を有するオレフィン系共重合体を合成し、混晶形成の可能性について検討した。研究対象としては、単独重合体が8の字らせん構造を形成することが知られているシンジオタクチックポリプロピレンとシンジオタクチックポリスチレンを選択した。 まず、Cs対称ジルコノセン触媒を用いてプロピレンと1,5-ヘキサジエンとの環化共重合を行い、主鎖に1,3-シクロペンタン構造を有するシンジオタクチックプロピレン系共重合体を合成した。ついで、ハーフチタノセン触媒を用いてスチレンと共役ジエンとの共重合を行い、シンジオタクチック構造を有するスチレン系共重合体の合成を検討した。ブタジエンとの共重合ではブロック共重合体が、イソプレンとの共重合ではランダム共重合体が得られた。さらに、同触媒を用いて、スチレンとp-置換(メチル,t-ブチル)スチレンとの共重合を行い、各々対応するシンジオタクチックランダム共重合体を合成した。 上記合成した共重合体の構造解析を検討した。プロピレン/1,5-ヘキサジエン共重合体では、8の字らせん構造を形成するものの、混晶の形成については確認できなかった。また、スチレン/共役ジエン共重合体は、スチレン含量が低く、低結晶性であった。一方、スチレン/p-置換スチレン共重合では、モノマーの仕込み比により、生成ポリマーの組成を広範囲に制御できることが明らかとなった。同共重合体について、8の字らせん構造を有する結晶構造を誘発するため、溶融状態から冷水中にクエンチすることにより非晶ポリマーを調製し、ついで有機溶媒の蒸気中で溶媒を包摂した結晶を調製した。さらに、適温でアニールすることにより溶媒を除去し、目的とする8の字らせん構造を有する結晶を調整した。熱量測定、X線回折測定より8の字らせん構造と混晶の形成が示唆された。
|