研究概要 |
緩速砂ろ過の除菌率測定方法検討のために小型のモデルシステムを作成し、装置へ大腸菌を流入させたときのろ過水菌濃度を経時的に測定して菌流出パターンを得た.これにより菌流入濃度を3時間以上一定に維持させると,6時間後にはろ過水菌濃度がある一定の値(定常値)に到達することが判明した.この値と流入濃度との関係から,信頼度の高い除菌率を計算できた.この方法による除菌率測定を数週間おきに実施することで,ろ過装置の熟成過程を評価することができた.有機物や無機物を豊富に含んだ培養液排液を流入させ続けると,除菌率値LRD (Logarythmic reduction value of microbe density)は初期の1.3から5週間後の2.6以上まで上昇した.排液の流入をさらに続けてもLRDはそれ以上上昇しなかったことから,装置は5週間以内に熟成状態に到達したと考えられた.また,一度熟成状態に到達したろ過装置に清水を流入させ続けると,5週間後にはLRDは初期値に戻ったことから,熟成過程は不可逆的・累積的なプロセスではなく,流入水の状態に応じた平衡状態への移行であることが示唆された. 除菌率の変動要因を調査した結果,流入水への曝気によりLRDは2.7〜2.8から3.6〜3.8まで上昇した.さらに流入水の温度を30〜35℃に加温したところ,LRDは無加温の3.6〜3.8から4.1〜4.8へと上昇した.ろ過速度を通常の0.2m/hから0.4あるいは0.07に上下させてもLRDに大きな変化はなかった.アジ化ナトリウムを流入水に添加して,ろ過膜内の生物活動を一時的に停止させたとき,LRDは4.2から3.2へと低下した.熟成状態のろ過装置を用いて,大腸菌流入から6時間後に装置を分解して砂層の大腸菌分布を調べたところ,ろ過膜及び砂表層には流入濃度よりも高い濃度で大腸菌が存在したが,表層から10cm下の砂では約1/1000(LRD=3)の濃度となり,20cm下では1/10000以下(LRD>4)まで低下した.植物病原体を用いて除菌率を調べたところ,大腸菌ではLRD4以上の装置にも関わらずRalstonia(青枯病細菌では1.7以下となった.Fusarium(根腐病菌)では2.7以上の高い効果が得られたが,菌の種類によってろ過装置の除菌効果に差があることが示された.
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