明治期を代表する芝庭を有する「旧岩崎邸庭園」(東京都文京区、国指定重要文化財)を対象として、岩崎家関係者へのヒアリング、残存図面・古写真の分析と文献調査による他の明治期庭園の検証により、岩崎久彌が和洋両館を新築して庭園を芝庭へ改造し、米国キャノン機関に本邸宅が接収されるまでの期間(1900年頃〜1945年)における旧岩崎邸庭園の構成と意匠を考察した。 その結果、(1)洋館の前面に配された広がり感のある芝生を中心とした主庭、(2)和館前に設けられた書院庭、和館内の坪庭、和館に付設された内庭、(3)邸宅の表門から馬車道を経て馬車回しに至る前庭、(4)敷地の南端部に設けられた花壇園地、の大きく4ゾーンから構成され、特に主庭であった芝庭については東京おける明治期庭園の特徴を色濃く反映していたことが明確となった。また建物が和洋併置されていたのと同様に庭園についても、和洋の景観軸が存在していたことも明確となった。 また明治期に出版された『名園五十種』に掲載されていた東京の芝庭を有する29庭園の記述内容の分析により、芝庭の構成要素は大きく、(1)芝生、(2)園路、(3)背景植栽、(4)前景植栽、(5)捨石の5点にあることも明らかとなった。
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