研究概要 |
本年度は,RT-PCRによるディファレンシャル・ディスプレー法を用いて単離した,カイコの胚子活性化に関与すると考えられる遺伝子断片(RNA helicase like ; RHL)の完全長cDNAをRACE法にて単離する事に成功した。そのcDNAは約2.7k bpあり,593アミノ酸に相当するORFが含まれていた。開始Metの直前には典型的なコサック・コンセンサス配列があり,3'UTRにはポリA付加シグナルの他RNAの分解に関与していると考えられているATTTA motifが認められた。予想されるアミノ酸配列中には,DEAD box RNA helicase motif, Serine rich regionや数種のキナーゼによるリン酸化サイトなどが認められた。このRHLは,今のところDEAD box RNAヘリケースファミリーに分類されると思われるが,他の生物種との比較からホモロジーは低く,カイコに限らず新規なものであった。 また,機能解析の第一歩として,この新規RHLのORFを含む約1.8k bpのcDNAをヒスチジン・タグ付きのタンパク質発現用ベクターに組込み大腸菌内での発現を試みた。その結果,ORFから予想される約6.8k Daの目的のタンパク質(rRHL)の発現が認められた。引き続き,ニッケルキレートカラムにてそのタンパク質を精製し,ポリクローナル抗体の作製を試みたところ,抗原に用いたrRHLを認識する抗血清を得る事に成功した。胚子発生初期におけるRHL mRNAの発現状況は,詳細な解析が既に完了し昨年の研究実績報告書に記載済みである。現在,RHL mRNAの発現解析と同時期のRHLの変動を,イムノブロット法を用いて解析中である。
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