前年度に弘前大学農学生命科学部附属生物共生センター金木農場の水田から、落水期、湛水期の土壌を採取し、水素・炭酸ガス、酢酸、メタノール、2-プロパノールを基質としたMPN法によりメタン生成細菌の計数を行い、土壌の採取時期、湛水、落水とは無関係に10^4〜10^7MPN/g(乾土)の数値を得た。本年度は、すべてのメタン生成陽性の培養液からメタン生成細菌を分離し、16S rRNA遺伝子の配列にもとづいた系統分類を行った。水素・炭酸ガスを基質とした場合はMethanobacteriaceae科、Methanomicrobiaceae科、Methanosarcinaceae科、酢酸およびメタノールを基質とした場合はMethanosarcinacae科、2-プロパノールを基資とした場合はMethanobacteriaceae科、Methanomicrobiaceae科のメタン生成菌が分離された。なお、水素・炭酸ガスを基質とした場合にはホモ酢酸生成苗による酢酸生成が確認され、Methanosarcinaceae科のメタン生成菌は水素・炭酸ガスではなく酢酸を基質として増殖したことが疑われる。落水、湛水期に関らずMPN法での菌種、基質利用の違いによる明確な季節変動はみられず、メタン生成菌は自然状態の水田土壌においてはその種類に限らずほぼ一定数を保っていることが示唆された。また本研究において複数の新種と思われるメタン生成菌の分離に成功した。
|