研究概要 |
Sphingomonas paucimobilis SYK-6株においてバニリン酸及びシリンガ酸は、それぞれプロトカテク酸(PCA)、3-O-メチルガリック酸(3MGA)へと変換されて、PCA4,5-開裂経路で代謝されると考えられていた。しかし最近、3MGAがPCA4,5-ジオキシゲナーゼ(LigAB)以外の酵素によって代謝され4-オキサロメサコン酸(OMA)となり、PCA4,5-開裂経路に合流することが示された。 SYK-6株の遺伝子ライブラリーから、3MGA分解能をE.coliに与えるdesZ遺伝子を単離した。desZ遺伝子産物は、3MGAを4-カルボキシ-2-ヒドロキシ-6-ケト-6-メトキシヘキサ-2,4-ジエノエイトに変換したことから、desZは3MGAジオキシゲナーゼをコードすることが明らかとなった。 desZのシリンガ酸代謝における役割を明らかにするために、desZ、ligBの遺伝子破壊株とそれらの二重破壊株を作製し、シリンガ酸での生育能と3MGA分解能を調べた。その結果、desZ及びligABの破壊はシリンガ酸での生育能に影響し、3MGAの芳香環開裂がdesZとligABに担われていることが示された。しかし、3MGAはテトラヒドロ葉酸依存性の脱メチル酵素によってガリック酸に変換されることが示された。さらにガリック酸はDesZ、LigABとは異なる芳香環開裂酵素によって分解されることが示唆された。以上の結果から、シリンガ酸は3MGAに変換された後、1)LigABにより芳香環開裂を受ける経路、2)DesZにより芳香環開裂を受ける経路、3)脱メチル酵素によりガリック酸に変換された後、未同定の芳香環開裂酵素により開裂を受ける経路の3つの経路により代謝されると結論された。
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