研究概要 |
Phaeosphaeria sp. L487株由来のジベレリン生合成酵素遺伝子クラスターから,生合成後期ステップに関与する20-oxidase (Ph20ox)をコードすると考えられる遺伝子の機能解析を進めた. ゲノムDNA上の配列からプライマーを設計し,RT-PCR,5'-RACE,3'-RACE等から完全長cDNA配列を決定した.完全長cDNA1761bpのうちタンパク質翻訳領域は1584bpで,膜結合型cytochrome P450モノオキシゲナーゼとして528アミノ酸残基をコードしていた.Ph20oxのアミノ酸配列は,イネ馬鹿苗病菌Gibberella fujikuroi由来の20-oxidaseと52%程度の相同性があった.異種タンパク質の形でPh20oxの酵素機能を調べるため,Ph20oxをメタノール資化性酵母用のベクター(pPICZ-B)に組み込み,メタノール資化性の高いPichia pastoris SMD1168株と資化性の低いP. pastoris KM71株を形質転換した.得られた形質転換体それぞれ1菌株ずつを用いて組変えタンパク質生産誘導とともにジベレリン基質・GA_<12>を添加して6日間培養を続けたところ,GA_<12>の代謝物としてGA_9 and/or GA_<25>をGC-MS分析により同定した.以上の結果より,カビ由来の20-oxidaseの酵素遺伝子の機能について異種タンパク質発現系を用いて初めて証明できた.現在,詳細な酵素反応解析ができるように,セルフリー系での実験の可能性を検討している. さらに,ジベレリン20-oxidaseがカビと植物とは全く異なる酵素種で関与していることに注日して,植物体内でカビ由来の膜結合型モノオキシゲナーゼタイプの20-oxidaseが成長制御に関与できるかどうかを調べるために,植物発現用コンストラクトを調製した.
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