研究概要 |
VDIRを強発現することにより、1α,25(OH)_2D_3依存的な転写抑制が顕著に認められたことから、1α,25(OH)_2D_3による転写抑制においてVDRと共に必須であることを確認した。また、TSA添加により、1α,25(OH)_2D_3による転写抑制が阻害されることから、HDAC2の関与の可能性が示唆された。免疫沈降の結果より、1α,25(OH)_2D_3の存在時、HDAC2およびNCoRがVDIRとVDRを含む複合体に含まれていることが明らかになった。更に、この複合体が実際に1α-nVDRE上で形成されていることをCHIP assayにて確認した。転写抑制メカニズムを解明するために行ったGST-VDIRをbaitとしたタンパク精製によりVDIRとVDRが1α,25(OH)_2D_3依存的に形成する巨大複合体を形成していることが明らかになり、更にその複合体の中にHDAC2およびNcoRが含まれていることを確認した。 近年、転写抑制のメカニズムにも様々な因子が関与していることが明らかになっている。しかもそれらは結合するプロモーター配列特異的な複合体を形成していると考えられている。従って、我々が用いているビタミンD依存的に転写抑制が生じるプロモーター上にても、これまで知られていない未知の複合体が形成されている可能性が高いと考えられる。 現在までの検討より、ATP依存性クロマチンリモデリング複合体がこの転写抑制に関与していることがわかっており、複数の複合体の関与も予想される。これら遺伝子の転写抑制に組織特異的な転写因子の関与が考えられるので、これら遺伝子のビタミンD依存的な発現抑制機構の組織特異性を証明するために、生化学的な手法を用いて複合体の全構成因子の同定に着手している。
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